エンディングノートと遺言の効力の違い
1 相続におけるエンディングノートの位置付け
世間では「終活」という言葉も一般的に使われるようになっており、特にご高齢の方はご興味を持たれている方も多いかと思います。
この終活の一つとして、エンディングノートを作成することも行われています。
エンディングノートとは、作成者の人生の終末について記載したノートのことです。
エンディングノートには決まった方式はなく、内容も自由に書かれているようですが、例えば、自分の人生を振り返るために「自分史や経歴」として楽しかった思い出や困難を乗り越えてきた経験などを記載すること、自分の希望する葬儀や相続の内容を記載すること、自分や相続人の便宜のために銀行口座や生命保険、パソコンデータの暗証番号などを記載することなどがされているようです。
書店や文房具屋、ネット通販などではエンディングノートが販売されており、1000円程度でも購入することができるようです。
ただし、注意しなければならないのは、基本的に「エンディングノートを記載しただけでは法的な効力は生じない」ということです。
後で述べるように、遺言書としての効力が発生するとは限りませんし、葬儀や相続の内容はあくまで作成者の希望を記載しただけのものになりますので、基本的には何らの法的な効力も発生しません。
法的な効力を発生させようと思えば、法的に有効な遺言書を作成するか、誰かと葬儀についての取決めや契約をすることが必要になります。
エンディングノートは、むしろ、このような法的な効力が発生しないからこそ、自分の思うとおりに気軽に記載できることにメリットがあるものであって、遺言書などとは目的が異なるものであると位置付けることができます。
2 なぜエンディングノートは法的な効力が発生しないのか
ではなぜ、エンディングノートは遺言書と異なり、法的な効力が発生しないのでしょうか。
遺言書は、法律で「このような方式で作成しなければならない」ということが厳格に定められています。
なぜ遺言の方式が厳格に決められているのかについては、法律の教科書などでは「重要な財産の処分だから」と説明されています。
公証人に作成してもらう公正証書遺言など以外の方式で、自分で作成するのであれば、遺言書は、一部の箇所を除き、原則として全文を自分で書く必要があります。
そうすると、例えば、市販のエンディングノートを使用して作成したエンディングノートは、全文を自分で書いたとは限らないこともあるかと思います。
そういった場合、そのエンディングノートは、遺言書としての要件を満たさない場合があるため、法的な効力はないということがいえます。