相続について準備しておくべきこと
1 相続の準備の必要性
⑴ 相続についての準備とは
「終活」として自分の相続に関して準備や対策をする方が増えており、4人に1人が高齢者という高齢社会である日本では、もはや一つのブームとなっているといえます。
ただ、相続の準備や対策をすることは大事だと言われたことがあったとしても、具体的に何をすればよいのか分からないという方は多いのではないでしょうか。
以下では、どのような相続の準備があり、どのような点に気を付けて対策していけばよいのかについて説明していきます。
自分が亡くなった場合に備えてあらかじめ相続の準備をしておくことは、残される相続人のためにも大事なことですので、しっかりと対策しておいた方がよいと思います。
⑵ 相続での準備や対策におけるポイント
相続の準備や対策をするにあたって、どのようなポイントに注意して進めればよいかを説明していきます。
ア 相続税対策
一つは、相続税の対策をしっかりしておくということです。
そもそも相続税が課税されるのかどうかや、相続税が課税される場合に対策をしなければどれくらい納付しなければならなくなるのか、相続税を節約する方法があるのかどうかについて、しっかりと把握しておく必要があります。
そのためには、まず、現状で自分がどのような財産を持っているのかを正確に把握することが重要です。
不動産、預貯金・現金、株式、投資信託、生命保険金等、自分がどのくらいの財産を持っているかを、資料をもとにしてしっかりと調査しましょう。
預貯金の場合は、どのような金額の財産なのかは明確ですが、たとえば、不動産や株式の場合には、相続税の計算ではいくらの評価額になるのかを把握しておくことも必要になります。
財産が把握できたら、誰に、どの財産を、どのくらいあげるか検討します。
イ 遺言書の作成
二つ目のポイントは、遺言書を作成するということです。
遺言書を作成しないまま亡くなった場合には、相続人間で、亡くなった方の財産を分割するための協議をしなければなりませんが、遺言書があれば、そのような協議をせずに相続をすることができます。
協議の過程で、相続人の間で争いになってしまうこともありえますが、あらかじめ遺言書を作成しておけば、そのような争いを避けることができる可能性があります。
その他の遺言書のメリットとして、遺言書で不動産を相続する方を定めておけば、その不動産の名義変更をする際に、遺言書を使ってスムーズに名義変更の手続を進めることができるということもあります。
2 相続税についての準備
遺産の額が基礎控除額を超える場合には、相続税の申告や納付をしなければならない可能性があります。
この申告と納付は、相続が発生してから(正確には、相続の開始を知った日から)10か月以内に行わなければなりません。
特に注意しなければならないのは、相続税の納付は原則として現金で行わなければならないという点です。
相続税の額は、プラスの財産とマイナスの財産がいくらあるのか、相続人の関係からいくらの基礎控除額があるのか、どのような控除があるのか、控除額を超える額がいくらであるのかなどによって決まります。
生前でも、ある程度、相続税の総額がいくらになるのかは予想することができます。
相続する側にとっては、できれば相続したものの中から相続税を支払うことができれば安心でしょうから、このような観点から、準備をしておく必要があります。
また、財産に不動産がある場合には、小規模宅地等の特例が利用できるかどうかを検討することが重要です。
この特例が利用できれば、不動産の評価額を大幅に下げることができ、相続税を大幅に抑えることができる場合がありますので、この制度を利用できるかを検討することは必須だといえます。
場合によっては、相続財産を預貯金から不動産に転化することや、不動産を別の不動産に交換することも重要です。
また、配偶者には評価額1億6000万円までは税金がかからないなどの控除がありますので、これらの控除の制度も上手に利用して、相続税の対策をしましょう。
3 生前贈与の仕方
被相続人の遺産が多ければ多いほど相続税の負担も大きくなりますので、亡くなる前に相続財産を減らすことが相続税対策の基本的な考え方だといえます。
そのため、生前に贈与をしておくことで、相続財産を減らしておくという手法が採られています。
以下では、相続税対策のとして生前贈与をする方法を説明します。
生前贈与の一つ目の方法は、暦年贈与です。
贈与を受ける者は、一年間で110万円までは非課税となっていますので、この枠内であれば税金がかかりません。
110万円を超えた場合には、超えた部分について贈与税がかかります。
ただし、相続開始前の3年以内になされた贈与は、相続財産に持ち戻して考えることになっていますので、早めに暦年贈与を検討した方がよいでしょう。
なお、令和6年1月1日からは、この持ち戻される期間が3年から段階的に7年に延長されるので注意が必要です。
生前贈与のもうひとつの方法は相続時精算課税制度を利用するものです。
相続時精算課税制度を利用すると、相続が発生するまで贈与税の支払いを猶予してもらうことができます。
すなわち、相続時精算課税制度を利用した場合には、相続発生のときに贈与されていた財産を相続財産に持ち戻したうえで、相続税の計算をすることになるのです。
持ち戻す際の金額は、贈与時の金額とされているため、仮に贈与後に価値が上がった財産を贈与していたのであれば、その分の節税効果を見込むこともできます。
このときにはメリットがあったといえますが、逆のときにはデメリットともなりますし、その他にも注意すべき点があります。
相続時精算課税制度を利用する場合には、最初に適用を受ける年度の確定申告の際に、選択届出書を税務署に提出した上で、贈与があった翌年に申告する必要があります。
そして、この届出をした場合には、それ以後には暦年贈与の方法は使えなくなります。
そのため、どちらの方法を使うことにメリットがあるのかを慎重に検討しなければなりません。
なお、相続時精算課税制度の詳細については、以下の国税庁のホームページもあわせてご確認ください。
参考リンク:国税庁・相続時精算課税の選択
4 生命保険の利用方法
相続や相続税の対策方法として、生命保険を利用する方法があります。
生命保険を利用した場合には、被保険者を被相続人、受取人を相続人としておくことで、遺産分割協議や遺言の執行を待たずに保険金を受け取ることができます。
相続後には、葬儀代などで多額の出費があることもありますから、このような資金があると非常に便利でしょう。
相続税の対策の点でいうと、生命保険金もみなし相続財産として相続税の対象になってしまうのですが、相続人一人あたり500万円の非課税枠がありますので、これを利用して対策をすることができます。
たとえば、500万円の保険料を一括で支払う終身保険に加入すれば、保険金額がほぼ同額であったとしても、その分の相続財産額の減少につながるため、相続税を減らすことができます。
5 その他に注意すべき点
遺言書を作成することには、すでに説明したとおり、遺産分割協議をする必要がなくなったり、相続の手続きを円滑にしたり、相続税の対策となったりするというメリットがあります。
遺言書の記載内容に誤りがあった場合や、遺留分に配慮していない内容にしてしまった場合には、かえって、手続きを困難にしたり、相続の紛争を招いてしまったりすることになります。
また、自分自身の相続のことだけでなく、たとえば、妻に相続させることとした財産を、次に妻が亡くなった場合には誰にどのように相続させるのがよいのかなど、二次相続についても考慮して対策を進めていく必要があります。
妻が先に亡くなった場合にはどうするのかなど、万一に備えても準備もしておかなければなりません。
このように、相続の準備と対策には、どのような対策方法があるのかを知っているだけでなく、さまざまな可能性も考慮しながら進めていく必要がありますので、相続の準備をしっかりとするためには、相続や遺言書の作成について深い知識と豊富な経験を持っている必要があります。
この知識と経験は簡単に得られることはありませんので、相続の準備と対策をするときには、このような知識と経験を持っている専門家に相談することをおすすめいたします。
特に、相続の分野では法的な知識とともに、税務の知識が必要になってきますので、法律と税金の両方について詳しい専門家のアドバイスを受けることが非常に重要です。
これだけはしておくべき相続の準備
1 相続についての準備の必要
自分が亡くなった際の相続に備えて、あらかじめ準備をしておくことは、残された相続人のためにも必要なことです。
日本では、4人に1人が高齢者という高齢社会になっていますが、「終活」などとして、相続の対策をしている方が名古屋でも増えています。
2 遺言書の作成
相続について対策をする上で必要なのは、遺言書の作成です。
遺言書を作成しないまま亡くなった場合、亡くなった方の財産を分割するための話合いを相続人の間でしなければなりませんが、この話合いの過程で、相続人同士で争いが生じるおそれがあります。
亡くなった方の財産の全部について、それぞれ誰に相続させるかを初めから遺言書で定めておけば、相続人の間で話し合う必要はありませんので、このような争いを避けることができます。
また、遺言書に相続すべき財産の内容を記載しておけば、財産を分けようとした際に分けるべき財産の内容が分からないという事態を避けられます。
相続財産に不動産がある場合には、遺言書で相続する方を定めておけば、名義の変更をする際にも遺言書によって名義変更の手続きを進めることができます。
3 注意すべき点
2で述べたとおり、遺言書を書くことには、たとえ法定相続分どおりの相続であっても大きなメリットがあります。
しかし、その記載内容に誤りがあった場合や一部の相続人には遺留分があることなどに配慮されていなかった場合、遺言書が逆に相続で揉める原因になってしまうおそれがあります。
また、相続税について、支払う額をできるだけ抑える工夫や、相続人が相続税を支払うための原資を用意しておくなどの配慮をしておけば、相続人はよりスムーズに安心して相続をすることができます。
これらについて配慮した上で相続の準備をするためには、相続についての深い知識と豊富な経験を持っている専門家に相談することをおすすめします。
4 相続の準備についての相談
弁護士法人心では、相続についてのご相談を原則として無料にするなど、相談者の方に安心してご相談をしていただけるようにしております。
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