リバースモーゲージを利用した相続対策と注意点
1 リバースモーゲージとは
⑴ リバースモーゲージは自宅を現金化できる制度です
リバースモーゲージは、あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、簡単に説明すると、自宅を担保にして銀行からお金を借りることができる商品です。
どのような場合に利用されるかというと、貯蓄があまりない高齢者の方が、自宅を担保にして銀行から一定額を借り、そこから毎月10万円なりを生活費に充てるといった形で利用されます。
このように、リバースモーゲージを利用すると、自宅に住み続けながら、自宅を現金化することができます。
⑵ 借金は亡くなったときに不動産を売却して返済します
リバースモーゲージを利用すれば、実質的には毎月お金を金融機関等から借りることになります。
借りたお金の返済方法ですが、毎月返済しなければならない利息とともに、借金の元本自体が残りますので、契約者が亡くなったときの不動産売却代金で借金を返済することが予定されています。
2 リバースモーゲージのメリット
⑴ 老後の資金を確保できる
リバースモーゲージを利用すれば、毎月、契約者にお金が振り込まれることになります。
つまり、収入がなくなった高齢者にとって、第2の年金のような役割を果たし、老後の生活資金を確保することができます。
⑵ 自宅に住み続けることができる
従来、自宅を利用してお金を得ようとした場合、自宅を売却して売却金を得るか、自宅を誰かに貸して賃料を得ることしか方法がありませんでした。
しかし、リバースモーゲージを利用すれば、自宅に住み続けながら、お金を得ることができます。
3 リバースモーゲージの活用事例
⑴ 相続税の生前対策としても利用できる
相続税の生前対策として有効な手法として、相続人にコツコツ贈与を行い、遺産総額を減らすという方法があります。
不動産を相続人に少しずつ譲ることは大変ですが、リバースモーゲージを利用すれば、不動産を利用して毎月お金が振り込まれるため、そのお金を生前贈与に利用して、相続税対策を行うことができます。
もっとも、自宅を残すことで相続税を大きく下げることができる制度もありますので、そういった制度を利用できる場合には、リバースモーゲージを使わない方がよいという場合もありますので、注意が必要です。
⑵ 相続で揉める可能性を減らすことができる
貯蓄があまりなく、資産といえるのは自宅だけという場合は、一般的に、遺産を公平に分けることは難しく、相続人が揉めてしまう可能性が高まります。
リバースモーゲージを使えば、亡くなった際に不動産を売却するため、公平に遺産を分けることができ、相続人が揉める可能性は少なくなるという面もあります。
ただ、相続人全員が同意すれば、相続人で不動産を売却することもできますので、この制度を利用した方がよいかどうかは個々の事情によって異なるところだといえます。
4 リバースモーゲージの注意点
⑴ 長生きすればするほどリスクが高まる
リバースモーゲージは無限にお金を貸してくれる制度ではありません。
あくまで、自宅を売却した時の代金を基準として返済が可能と思われる限度でしかお金を貸してくれません。
利用される方が長生きすれば、融資の限度額が来てしまい、その時点で自宅を売却されてしまうリスクがあります。
そのため、利用額についてはしっかりと計画してから決めるようにするとよいかと思います。
⑵ 金利の上昇リスク
リバースモーゲージは、原則として、毎月利息を返済する必要があります。
そのため、金利が上がれば、毎月支払う利息も高くなる場合がありますので、この点にも注意が必要です。
⑶ 不動産の価値が下落した場合のリスク
リバースモーゲージは、不動産の価格の50%~80%程度を限度に融資をする制度です。
しかし、不動産の価格は時期によって変動するため、年数とともに不動産の価格が下落した場合、融資の限度額が見直されてしまうという事態もあり得ます。
5 リバースモーゲージによる相続対策は専門家にご相談ください
リバースモーゲージなどの相続に関わる分野では、法律や税金等、様々な分野が複雑に絡み合います。
リバースモーゲージは、老後対策・相続対策の一つとして用いられますが、リスクもあるため、利用には様々な観点からの慎重な判断が求められます。
リバースモーゲージの利用を検討されている方は、相続に関する法律や税金に詳しい専門家に相談することをおすすめします。
「財産が少ないから揉めない」は本当?相続紛争の実態と相続対策の必要性 兄弟が生前にたくさん贈与を受けている場合の相続分