生活保護を受けている方の相続放棄
1 原則、相続放棄はできない
原則、生活保護を受けている方(生活保護受給者)の場合、相続放棄はできないと考えられています。
相続放棄をしてしまうと、生活保護が打ち切られてしまう可能性があります。
そもそも、法律上、生活保護の受給要件として「利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用」するというものがあります。
この要件からすると、遺産という利用できるものがあるにも関わらず、故意に遺産を利用せず、それを放棄してしまうということは、この要件に反する可能性があるためです。
そのため、生活保護を受けており、相続放棄を検討されている方は、すぐにケースワーカーや弁護士にご相談された方が良いでしょう。
なお、相続放棄をすると、必ず生活保護が打ち切りになるわけではありません。
以降で、相続放棄ができるケースについてもご説明していきます。
2 相続放棄ができるケース
上記のように、原則、生活保護受給者は、相続放棄をすることができないと考えられています。
もっとも、以下のようなケースであれば、相続放棄をしても生活保護の打ち切りにはならず、問題ないと考えられています。
⑴ 遺産の中で借金が多いケース
遺産に借金が多い場合、相続放棄をしないと、借金も負うことになりますので、相続放棄をすることが可能です。
注意点として、相続放棄は3か月の期間制限があるため、なるべく早めに相続放棄をした方が良いでしょう。
⑵ 処分が困難な不動産などがあるケース
山林や田畑などで処分が困難な不動産がある場合も、相続放棄が可能な場合があります。
なぜなら、山林や田畑など処分が困難な不動産の場合、それを活用したり、換価したりすることも難しく、かえって維持費がかかる可能性があるためです。