相続税を適切に申告・納付しなかった場合のペナルティについて
1 刑事罰になる場合がある
相続税を適切に申告しなかった場合、最悪のケースだと、懲役や罰金を科せられる場合があります。
実際、相続人が、相続財産から現金、預貯金等の一部を除外するなどして内容虚偽の相続税申告書を提出し、相続税合計1億7676万円を免れた事案で、裁判所は、当該相続人を懲役1年6月、罰金2500万円、懲役につき執行猶予3年に処しました(名古屋地判平成29年6月1日)。
2 重加算税が科せられる場合がある
また、懲役や罰金が科されなくても、悪質な場合は、重加算税が科せられる場合があります。
国税庁の重加算税の運用については、以下の国税庁のホームページをご確認ください。
※参考リンク:国税庁/相続税及び贈与税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)
重加算税の場合、申告をしていない場合は原則40%の税金が追徴され、過少に申告していた場合は、原則35%の税金が追徴されることになります。
たとえば、本来は1000万円の相続税を納めなければならない相続人が申告さえしていない場合、その相続人は、本来納めるべき1000万円に加え、重加算税として400万円を追加で納める必要があります。
また、本来は1000万円の相続税を納めなければならない相続人が500万円しか相続税を申告・納税していない場合、その相続人は、本来納めるべき500万円(1000万円-納付済みの500万円)に加え、175万円(500万円×35%)を納める必要があります。
3 過少申告税や無申告加算税が科せられる場合がある
さらに、重加算税が科せられない場合、たとえば、遺産の調査がしっかりできておらず、遺産の漏れがあった場合などでも、過少申告加算税や無申告加算税が科せられる場合があります。
国税庁の過少申告加算税や無申告加算税の運用については、以下の国税庁のホームページをご確認ください。
※参考リンク:国税庁/相続税、贈与税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて(事務運営指針)
過少申告加算税では、税務調査の事前通知を受ける前に自主的に修正申告をした場合は、過少申告加算税はかかりませんが、税務調査を受けてから修正申告をした場合や更正を受けた場合は、最大15%の税金が追徴されます。
また、無申告加算税の場合、過少申告加算税とは異なり、税務調査の事前通知を受ける前に自主的に修正申告した場合でも、5%の税金が追徴され、税務調査を受けてから修正申告をした場合や更正を受けた場合は、税制改正により令和6年1月1日以降に申告期限が到来するものについては、最大30%の税金が追徴されることになりました。
なお、税制改正の概要については、財務省のホームページをご確認ください。
※参考リンク:財務省/加算税の概要
4 延滞税がかかる
以上のような重加算税や過少申告加算税が科せられる場合、それに加えて延滞税が科せられます。
延滞税については、利子のようなもので、たとえ加算税が科せられない場合であっても、延滞税を支払わなければならない場合があります。
延滞税の詳細については、以下の国税庁のホームページをご確認ください。
※参考リンク:国税庁/延滞税について
延滞税の税率については、納期限までの期間及び納期限の翌日から2月を経過する日までの期間については、年「7.3%」と「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低い割合を、納期限の翌日から2月を経過する日の翌日以後については、年「14.6%」と「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合を適用することとなります。
令和6年1月1日から令和6年12月31日までの期間であれば、2か月を経過するまでの日の期間は、2.4%、2か月を経過する日の翌日以降の期間は、8.7%となっています。
5 税理士に依頼しても適切に申告・納付できるとは限らない
このように、相続税を適切に申告・納付しない場合、最悪のケースでは刑事罰に処せられる可能性があり、刑事罰にならない場合でも、重加算税や、過少申告加算税や無申告加算税、延滞税を支払う必要があります。
また、税理士に依頼した場合であっても、その税理士が相続税に詳しいとは限らず、万が一、相続税に詳しくない税理士に依頼してしまった場合、相続税を適切に申告できず、重加算税や過少申告加算税等のペナルティを課せられてしまう場合あります。
そのため、相続税を適切に申告するためにも、相続税については、相続税に詳しい税理士にご依頼されることをおすすめします。